「いくら人材を確保しても、どんどん人材の問題が出てくる」
介護事業所を経営している方にとっては、頭の痛い問題ではないでしょうか。
「もっと新しいことに取り組まないといけないのに」「果たして今やっていることは自分の役割なのだろうか」人材育成において悩みはつきません。
そこで、年間150日以上の研修・セミナーを実施し、その際に多くの介護事業所へ相談をしてきた経験から、人材育成で疲れている経営者にとって知っておきたい人材育成のポイントを書きました。
自身の事業所において足りていないところがありましたら、ぜひ活用をしてみてください。
1.問題スタッフの問題を解決しようとしない
多くの施設が問題スタッフを抱えています。言うことを聞かない、叱責するとふてくされる…あなたも経験があるかもしれません。多くの場合、こうした問題スタッフを教育し直し、戦力にしたいと考えることが多いようですが、これはするべきではありません。度合いにもよりますが、小さな問題を抱えているスタッフであれば、「そういうもの」と割り切ってしまうのが得策です。
「問題スタッフを放置しても大丈夫なのか?」そうした疑問はあるでしょう。もちろん、過半数を超えるスタッフが問題であれば、それは解決する必要がありますが、1名、2名程度の問題スタッフであれば、むしろ他の優良なスタッフに目を向けるべきです。スタッフはよく見ています。そして、客観的な評価をすることが重要なのは、言うまでもありませんが、感情的に「ちゃんと見てくれている」ということの方が重要なのです。
例えば、もしあなたが問題スタッフの解決ばかりを考えて、その問題スタッフにいつも目をかけていたとしましょう。あなたは問題スタッフの解決をするという大義名分の元、その1名なり2名ばかりに手をかけていると考えますが、ほかのスタッフから見れば「いつもあのスタッフばかりに声をかけている。私たちには目もかけてくれない」という視点で見られてしまうのです。
私がコンサルティングをしたある施設でも、いつも施設長がひとりのスタッフにばかり声をかけ、よく注意をしていました。施設長としては一所懸命なのですが、スタッフにヒアリングをすると「1名のスタッフばかり贔屓されている」という結果が出たことがあります。せっかくエネルギーを注ぐのであれば、施設全体の人材がやる気を出すように、全体に目を配りたいものです。そういった点で、時には問題スタッフは「放っておく」ということも得策と言えるのです。
2.人材育成の見える化(仕組み)
一人ひとりに、人材育成のプランを考えることも大事ですが、それを経営者一人で考えているケースもよく目にします。「これが経営者の仕事だ」と思って張り切っているのは分かりますが、それで疲れてしまっては元も子もありません。現場のスタッフには「見える」ことでの安心感を与えることも一つです。現場にとってのメリットはありますが、それだけではありません。経営者にとっては見える化とは、効率よく考えることにもつながります。ちなみに、ここでいう「見える化」とは、「点を線で結んでいくこと」です。
例えば、今までやってきた研修・評価制度・キャリアパス・賞与査定など。いずれも、「誰が」「いつ」「どこで」「どうやって」実施するのかを明確にして、それぞれを線で結び合わせてみると分かりやすいです。この項目を一つ一つ繋ぎ合わせることで、自然と見える化のマニュアルが完成していきます。誰が見ても分かるような仕組みづくりがスタッフに安心感を与え、経営者自身に余裕が生まれるのです。
3.外部の活用(餅屋は餅屋に)
スタッフに同じことを伝えても、外部の場合響き方が違います。なぜかというと、立場によるコミュニケーションギャップが存在するからです。経営者とはいえど、同じ会社のなかの一人であることに違いはありません。その経営者から言われたことと、外部から言われたこと。スタッフの捉え方も随分と変わってくるものです。
「外部に大切なことを伝えることを任せるのは如何なものか」と感じる方もいるでしょう。ただ、これは決して「丸投げ」「責任転換」ではありません。しっかりと相手に伝える手段の一つでもあるわけです。実際に伝えたことで「トップと一緒のことを話している」「トップの言っていることは、自分勝手なことではなく正論なんだな」とスタッフが思ったという声も聴かれます。
何度も一人で言い続けるのではなく、外部も使いながら伝えることも一つの方法です。
また、1.で伝えた「問題スタッフを放置する勇気を持つこと」も外部の活用は大いに活かせます。「いやいや、問題スタッフをそのまま放置」するのは、、、という問題については、ある程度対策は必要です。例えば、就業規則の変更。どういった働き方をするのがこの事業所にとって大切なのか。逆に、どの行為が間違っているのかを表記することは、自身の想いを表現するツールの一つとも言えます。
4.リーダー育成の強化(経営者はリーダーのみに焦点を当てる)
規模にもよりますが、スタッフ全員を見ることは困難なこともあります。全員を見渡すことは理想ではありますが、もし見渡すことが出来ないほどスタッフの人数が多いようでしたら、直下のリーダーのみに焦点を当てることが得策です。直下のリーダーに伝えることで、リーダーがその下のスタッフに伝えていく。その流れが組織の適正な動きです。だから、経営者はリーダーをいかに育てるかに注力することが大切です。
人材育成に疲れてしまっている経営者にとって今必要なのは、リーダーを見ること。むしろ、リーダーのみに焦点を当てて、何を思っているのかを伝え続けることです。よく介護事業所のリーダーには、「なりたくないのに、なっちゃったリーダー」がいます。つまり、自ら望んでいないのに人手不足や経験値の関係で仕方なくリーダーになったということです。こういったリーダーには、経営者からのフォローが必要です。リーダーの悩みを解消することに全力を尽くす。そのために、リーダーのみ観察することに集中するのも一つの考え方です。
5.助成金の活用術
「人材育成も考えなくてはいけない。ただ、そこにかかるコストも出来るだけ押さえることも必要。あと、それに合わせて売上も上げることも考えなくては。。。」
人材育成について考えていると、自然とその周りのことも考えるようになり不安感も増大していくことがよくあります。そんなときには、助成金の活用も一つの考え方です。実は、助成金活用は人材育成につながり、コストも抑えられ、同時に売上にも繋がるという効果が生まれます。助成金ありきで人材育成を考えるのはオススメしませんが、人材育成を真剣に取り組もうとするのであれば使わない手はないです。適正に育成を実施し、そしてそれに合わせて助成金の申請をする。その流れを確立していくことで、人材育成のポイントも見えてきます。ただ、あくまで申請においては十分に準備が必要です。もらえるものと勝手に思い込んで、蓋を開けてみたら不支給になってしまったケースも見受けられます。専門家から事前に確認をしながら進めていくことをオススメします。
以上の5つが人材育成におけるポイントになります。
いかがでしたでしょうか?
「介護人材」という大きな悩みに対して、実際にアドバイスした内容をまとめました。今後の人材戦略のお役に立てましたら幸いです。
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セミナー内容
◎人財育成に必要なのは「人間力」
・これからの介護人財に求められる
3つの能力・資質
・いよいよ人間力の時代が到来
・人間力を高めるために必要な3つの要素
・こころを磨くための4つの言葉
・自己反省の心からスタッフの距離を縮めていく
◎人事評価制度でスタッフのモチベーションアップ
・評価制度に必要なモデル行動とは?
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後藤功太(ごとう こうた) プロフィール
1982年8月生まれ。静岡県浜松市出身。日本福祉大学社会福祉学部卒業後,特別養護老人ホームに生活相談員兼介護職員として従事。独自のリーダー論を基に職場環境を改善したことで,離職率を1年で20%から5%まで改善。2014年に独立し「ふくしえん社労士事務所」を設立。人材定着に結びつけるための人事評価制度・研修を主な事業とし,主な著書に『ダメリーダーでもできた!できるチームを動かす5つのステップ』(秀和システム)がある。
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